犬とのよりそイズム

おかしな『犬のしつけ』???Vol.7

犬が邪魔な場所にいたら、どかさなければならない

◎犬に不快を与える行動なのでやめましょう

どかし続けたらリーダーになれる!?

もう笑うしかないです(笑)これが本当なら、どかし続けることで飼い主はリーダーになれる?ということになるかと思いますが、おそらく嫌われます(笑)近づいたら、どかされるのわかるから、飼い主のそばで、安心してねそべったりしなくなるかと思います。どかされる=嫌なことが起きる、と考えると、行動分析学的に考えると、そうなります。それって、さみしくないですか!?我が家の犬たちを見ていると、じゃまなところにいるときは立ち尽くして悩んでいます(笑)気配を察してどいてくれることもあるようですが、それは上下とかは関係ありません。そこにいたい!と主張が強い方が残る、というふうに感じています。あとは、遊んでいるときにじゃまなところで寝ているのがいると、飛び越します。たまに踏んで怒られます(笑)これも、誰が言い出したのか・・・

股がられると怖い!?

 愛犬と一緒に楽しむ、K9ゲームというのを、オフィシャルプロメンバーとして日本上陸からずっと参加してきていますが、そのゲームの中に、犬を伏せさせてその上をまたぐ、というものがあります。ジョーパップリレーという、犬一頭に対してハンドラーが4人、それぞれのステーションで与えられたお題目、例えば、スピン(くるっと回る)ゴロン(寝そべって回る)8の字(ハンドラーの足を8の字を描いてくぐる)アラウンド(ハンドラーの周りを回る)などのパフォーマンスをさせるという種目に出てくるお題目の一つです。またいではいけない!バカにされる!とされているのですが、あえてお題目になっています。もともとアメリカから来たゲームですので、アメリカではその常識はない、ということでしょうか???

 お題目に出る可能性があるので、ゲーマーたちは練習に励むのですが、まず伏せの指示を出して伏せてもらい、その上をまたぐのですが、ほとんどの子が最初は怖がります。またいだら自分が上だと思うはずなのに、怖がるのです!?寝ているなら大丈夫?NO! NO!寝ていたら、自分が上だと思えません!意識がないのですから!なので、ハンドラーはけっこう必死に、こわくないということを教えていきます。おやつをつかったり、だんだんと股の下にくるように自分が動いたり。そう考えると、犬をどかさなければならない意味がわからなくなります。こんな情報があるなんて、なんとも情けない。犬を飼っているのに犬のしつけに無頓着な妹は、こんなバカげたしつけの考え方があることにとても驚いていました。

 寝ているところをどかそうとすると唸る子もいますが、気持ち良く寝ているところを起こされたら、それは誰だって嫌ですよね。だから「嫌だ」という気持ちを表現しただけです。それを大らかに受け止めてくれるであろうと、飼い主さんとの信頼関係ができている、と考えることもできるかと思います。うちの犬も、嫌なことをしようとすると唸ります(笑)「はいはい、わかったよ、嫌なんだね、でもやらせてね」(たいがいごはんのあとヒゲをお湯で洗うとき、こちらの都合で抱っこしたいときです)犬たちは唸ってもやめてくれないことはわかっているので、それでも唸りますが、仕方なく抱かれてあくび(カーミングシグナル)して、抱っこから解放されたあと、これ見よがしにブルブル(カーミングシグナル)します。それでも、私と犬たちとの関係が変わると感じることはありません。

犬をソファに乗せてはいけない

◎ソファで愛犬とのラブラブ時間はとても癒される時間

 

ライオンキング!?

 これもかなりポピュラーな「犬のしつけ」のようですね。ドッグテックインターナショナルのドッグトレーニングアカデミーでも、「ソファの上に犬を乗せたら『ライオンキング』になる!」と、大真面目に恩師が言っていて、当時は「なるほど!」と思ってしまったので、帰国してからしばらくはソファに乗ったら下ろしたりしていましたが、すぐに「ん?なんだかおかしいぞ?」ということになりました。当時よく遊びに来てくれていた友人たちは、そんな「犬のしつけ」の信者ではなく、ただ愛犬をラブラブ、幸せに暮らしたいということしか考えてない人たちだったので、我が家の犬たちがソファに乗っていても平気でした。まだ4、5ヶ月くらいの子犬が、彼女の肩にアゴを乗せても萌えるばかりで、それをまさか「自分が上になろうとしている!」などとこれっぽっちも考えていなかったと思いますし、感じてもいなかったと思います。私も、うちの犬が友人にたいして支配的な態度をとっている、とか思わなかったですし、逆にロックはとの友人のことが大好きで、彼女の名前を言うと嬉しそうに玄関まで走っていくほどでした。

愛犬たちとの大切なコミュニケーション

 当時使っていた我が家のソファは今使っているソファよりも小さく、人二人並んで座ったらいっぱいになってしまうくらいのものでした。当然、私と4頭(当時は4頭でした)が一緒に座れるはずはなく、しかたなく彼らに譲って、私はソファを背もたれに、床に座っていることが多かったです。そしてその私の肩に犬たちはアゴをのせて気持ちよさそうにしていました。まさに、「犬とのよりそイズム」の表紙です。

 ソファを犬に占領させっぱなしにすると、飼い主の指示に従わなくなる、という説もあるようですが、我が家の犬たちは、私がソファから立ち上がって戻って来ると、私が座っていたところを占領します。その顔はどこかいたずらっぽく見えます。「あれー、そこは私の席だよ〜、どいて〜」といってどかそうとすると唸ります(笑)このとき指示で降ろすことはしません。それは私が心地よくないと感じるからです。愛がない(笑)なので、わざと体に触って「ちょーっとでいいからどいてよ〜」とやって少しずらしてやると、唸りながらもされるがままでいます。また立ち上がると同じことのくりかえし。どうやら、そんなふうにかまってほしいようで、それがトイレに立ったときの私と犬たちのゲーム、コミュニケーションになっています。そんな愛犬たちが可愛くて仕方ありません。

 寝ているときも同じようなことをやります。トイレに立って戻ってくると、私の枕の上を占領します。もちろん、どいてもらいますが、あまりにも気持ちよさそうに寝ているときは、少々窮屈ですがゆずってやることがあります。もちろん、だからと言って彼らが私に対して支配的にふるまうことは一切ないのです。言うことを聞かなくなることもないので、どうしてそういう説があるのか、理解できないでいます。

著者として謝罪

 ここまで書いて、みなさまに謝らなければならないことがあります。拙著「犬の問題行動の処方箋」(緑書房)手にとってくださったみなさまのおかげで、7年間ロングセラーとなっております。あらためて感謝いたします。ありがとうございます!しかしながら、この本に書かせていただいた、犬とのつきあいにおける「10のベースプログラム」に『ソファに乗ったら下ろしましょう』というのがあります。

 実はこの本が書かれたのは、Doggy Labo を立ち上げてそれほど経っていないころで、当時はまだ、シドニーでの研修先、ドッグテックインターナショナル・ドッグトレーニングアカデミーで教わったことをそのままマニュアルに取り入れて飼い主さんにお伝えしていました。しかし、出張レッスンでお宅へうかがい、犬たちと向き合っているうちに「なにかヘンだぞ?あてはまらないぞ?」ということがポロポロ出てきたのです。どちらを信じるべきか、もちろん犬たちが教えてくれた方を信じる!ということで、私の考え方もどんどん変化してきました。初版が出版されたのは2011年、原稿はその5年前くらいに書かれていました。諸事情により5年遅れて出版され、2018年現在に至ります。守破離とでもいいましょうか、今ではほぼ独自の考え方で「犬とのよりそイズム」が誕生しました。