犬とのよりそイズム

犬とのつきあい方を間違えないために

オオカミの本当の群は”家族”だった!

犬の祖先はオオカミと言われています。
オオカミの群には順位があり、厳しい上下関係があったと言われていましたが、
本当の群はそうではないことがわかりました。

上下関係があったのは、囲われた敷地の中に、無作為にオオカミを入れて、
そこでできた群れを観察したからでした。

人間社会で例えると、会社組織や自治体のようなものだと考えられます。
会社組織では、物事をスムーズに進めるために、権限、決定権の順位を決めておく必要が出てきます。
自治体も、たとえば3人のお父さんが集まったら、誰が決めましょう?
ということになるかと思います。
なので、自治会長さんが必要になります。

しかし、本当の群は家族だった。

「Beyond Words」What Animals Think and Feel  CARL SAFINA

2015年に出版された「BEYOND WORDS」によると、
本当の群は家族だった、とあります。

それは、イエローストーン国立公園で、絶滅させてしまったオオカミを
復活させようという壮大なプロジェクトでわかったことでした。
カナダでオオカミを捕まえて発信機をつけて解放してやります。
するとオオカミは群に戻った。

その群れを全員捕まえてイエローストーン公園に連れてきました。
その群れを観察したら、家族だったそうです。

発信機を付けられたオオカミは、家族の元へ帰ったのです。
残念ながら、この本はまだ日本語に訳されていませんので、
拙いですが私がなんとか訳した?ものを読んでいただければと思います。

私が一番強く感じている、犬とオオカミの比較についてお話しします。

子オオカミは、犬たちが飼い主にするように、愛情やなつこさを表現します。
しかし、成長するにしたがい、彼らは彼ら自身の生をコントロールするようになります。しかし犬は、生涯人間に依存し、従順でいられます。
それによって、犬の発達が遅れると言えます。
そのため、犬は成熟しきれない、自分の生を人間にゆだねられる動物、
まるで子どものままでいるオオカミのようです。

オオカミは自分の生を人間にゆだねることはしません。
彼らは自ら決断しなくてはならないのです。

昔の人々は(主に特に男性の生物学者たちでしたが(笑))は、
オオカミのアルファ雄のことを「BOSS」だと言っていました。
しかし現実には、群の順位は二つのグループに分かれます。
一つは雄の、もう一つは雌の。では、どちらに主導権があるのでしょう?

微妙ですが、観察から、群の大部分の意志決定は雌のアルファがしているようでした。どこへ行くのか、いつ休むのか、狩りをするときにどのルートで移動するのか、
そして一番大切なこと、どこで巣を作るのか、
そのほとんどを雌のアルファが決めているのです。

イエローストーン公園に生息するオオカミの観察によると、
アルファ雄は、群の他の雄、それは息子たちだったり、
養子に迎えた子だったり、弟だったりしますが、
彼らに過度に攻撃することはありません。
アルファオオカミがアルファとして存在する条件は、
ある種の性質を持っているにすぎないのです。

ある種の性質とは、誰が最も支配的であるか、
常に部下にどなりちらすようなリーダーではなく、
静かな自信を持った、自分が何をしたいか、すべきか、
群にとって何がベストかを知っている、それを心地良いと感じ、
群を落ち着かせることができる能力です。

それを人間に例えると、ダグ・スミスのような人だと、
オオカミたちの観察者リックは言います。
「ダグは、とても悠長で、思いやりがあり、
誰に対しても決して怒鳴るようなことはなく、
みんなの状況をとてもよく把握していました。
彼は、優しくみんなをまとめる力を自然にそなえていて、
最高の信頼を得ていました。
なので、意図せず人々をやる気にさせることができ、
おそらくみんな、喜んで何時間も彼と働きたいと言うでしょう。
そして、これを聞いたら、きっと照れるでしょう」

「BEYOND WORDS」CARL SAFINA /HENRY HOLT

このことは、2015年になってやっと発見されたのでしょうか?
それは違います!

実は、1975年に、アドルフ・ムーリー博士が書いた
「マッキンレー山のオオカミ」によると、やはり「オオカミは家族だった」とあります。
そのことを、「動物感覚」の著者、コロラド州立大学教授のテンプルグランディンが
その著書の中で指摘しています。

ではなぜ、オオカミの群れには順位がある、上手関係がある、主従関係がある!
という説がこれほどまでに広まってしまったのでしょう?


2016年に出版された、ジョン・ブラッドショー著
「犬はあなたをこう見ている」に、その訳が書かれています。

それは、警察官だったコンラッド・モスト大佐が、家族ではない“群“を観察して、
「仲間を恐怖心によって思いのままに動かす一頭のボスが群を支配している」
という間違った理解をしてしまったことによるものだったようです。
確かに、警察や軍隊などの組織では、序列が大切であると思われますので、
なるほどそうなってしまったのか、という気持ちです。

ブラッドショーは、本当の群(野生の群)は家族で構成されていることが観察され、
研究されている事実に基づき、

犬を支配しようとするトレーニング方法は改められるべきなのに、
まだまだ力で支配しようとするトレーナーが減らないのはなぜか?

と、著書で訴えています。
残念ながら、それを支持するネット上での情報も少なくないどころか、
多いように感じています。
本、雑誌、テレビ、ラジオなどのメディアの影響も強いと思われます。

レッスンで伺ったお客様先で、「よりそイズム」を知る前にしてしまった、
愛犬に対するひどい仕打ちを悔やんで、涙する方も少なくありません。

犬とつきあうことは、実はそんなに難しいことではないのだと思います。
間違ったマニュアルによって難しくされてしまっている、そう感じます。
家族として感性で向き合えば、どう接するのがいいのか本当はわかることなのです。

肉食動物の世界では、リーダーの役割が特に重要、と説くものもあるようですが、
オオカミの群のリーダーはお父さんオオカミであり、
お母さんオオカミであることがわかっています。

お父さん、お母さんの役割は何でしょう?子オオカミたちに食べ物を与え、
休める場所を与え、危険から子オオカミたちを守ることではないでしょうか?

子犬のしつけのポイント

家に来たばかりの子犬は、環境の変化で免疫力が低下しているそうです。なので、可愛いからといって触りすぎたり、遊びすぎたりしてしまうと、命の危険いさらされることもあるそうです。

16年2000頭以上の犬たちとレッスンで向き合って来て、特に、早い時期に親兄弟から離されてしまい、ガラスケースで展示され、人や犬と触れ合えない環境から来た子犬はその傾向が高いように感じます。

・新しい環境に慣れるように、かまいすぎないように注意し、
よく食べ、よく眠って、適度に遊び、人間は優しい存在であることを子犬に伝えましょう

・犬という種を人間の生活に慣らしていくためには、教えてあげなければならないことがた
くさんあります。
教えてもらわないとわからないことがたくさんありますので、叱らず
怒らず、わかりやすく教えてあげましょう。

・教え方がわからない場合には、早い時期にプロに相談しましょう。
※人間の都合ばかりを優先して、犬が犬として生きられないことにならないよう
注意しましょう。

・体罰や大きな音など、犬が嫌がる刺激を使うと、恐怖心から吠えたり、
噛むようになったりしますので、細心の注意が必要です。

・犬と人間という異なる種の間では、上下関係はありません。犬との関係は相互作用、接し  た通りに関係ができあがります。
優しく接したら、優しい関係になります。

・犬たちは、あなたの“地位“など狙っていません(笑)
間違った「しつけ」という名の虐待をしてしまい、噛むようになった犬たちのケースを山  ほど経験してきました。

良かれと思ってやったことなので、飼い主さんもある意味犠牲者です。
まちがった情報をつかむことがないよう、
感性で、心で感じるようにしてみてください。

子犬との関係をつくるために飼い主が気をつけるポイント5

  1. その子がその子であることに、無条件に愛情を注ぐ
  2. 犬の要求に応えられるときは応えてあげる。
    応えられないときは、そのように伝えて理解できるように教える。
  3. こちらのお願いを聞いてくれたときは感謝をする
  4. 犬が理解できるようにほめる
    してほしくないことは、別の行動に変えるようお願いする
  5. 犬ができないのは、教え方が悪いということを自覚する

こんなことはしなくていい!

アイコンタクトを取らせる

※無理強いしなくても、目を合わせるようになります
指示してしまうと、本当のアイコンタクトはできなくなります

無理やり膝の上に仰向けにする

※これをやったために、噛むようになった犬たちをたくさんみてきました
どうしてもひっくり返したい場合は、遊びの中で楽しくできるように教えてください

マズルコントロールをする

※繊細なところなので、優しく触れるように慣らしていくようにしてください
コントロールなどという物騒な発想は必要ありません

フセの姿勢をとらせる

※芸として教えるなら問題ありません。
ただ、普段の生活の中で絶対に必要だとは思えませんので、
犬にもメリットがあるように、例えばごほうびとしておやつをあげるなど、
楽しくやりましょう。

ごほうびが欲しくて伏せるようになると、
その子が本当はどうしたいのかを見せてくれなくなります。
オスワリも同じです。

あまりさせすぎると、一緒に暮らす相棒としてつまらない犬になってしまう、と私は感じています。せっかく種が違うので、犬という種らしい行動を見せてもらいたいものだと
思ってしまいます。

引っ張りっこなどの遊びは飼い主が必ず勝つ

※犬だっていつも負けてばかりだとつまらないと思います。
心に余裕がある飼い主さんは、負けてやって楽しむことができる、と私は考えています。

家はテリトリーなので飼い主が支配する

※犬はそんな風に大げさに考えていないと思います。
入ってはいけない部屋をつくるのはかまいませんが、
そんなのさみしいな、と私は思います。
和室など、ダメージを受けやすいところは仕方ないかもしれませんが、
我が家ではウッドカーペットにして排泄されたときなどの
ダメージを防ぐように配慮しています。(賃貸なので)

飼い主がごはんを先に食べる

※オオカミの群では、リーダー(お父さんオオカミ)は先に食べない、
と「BEYOND WORDS」に書いてあります。
お母さんオオカミと子オオカミたちが安全に食べられるよう、
寝たふりをして見張っているのでしょう。周囲の安全を確認して、
マーキングをして眠ってしまいます。

玄関からリーダーが先に出る

※環境によりますが、犬が先に出ると危険な場合が多いかと思いますので、
飼い主さんが先に出るようにした方がいいでしょう。
しかし、庭があり、玄関から先に出ても危険が及ばないと確信される場合には、
たとえ飼い主より犬が先に外へ出ても問題ありません。

まさか、先に出たので自分の方がえらい!などと思っているわけはありません。
それは、嬉しそうに外に出る犬たちの様子を見ていたら、
わかることではないでしょうか。ただ「嬉しい!」です(笑)

命令は一度しか言わない

※犬にも意思があります。やらないならば、やってもらえない自分を省みましょう。
「何がなんでも、飼い主の言ったことはヤレ!」というのは、
あまりにもエゴイスティックで、それでは犬はまるで奴隷のようです。
相手の意見も尊重して、どうしたらやってもらえるかを考える。
人間関係にもとても大切なことなのではないでしょうか。

ただで可愛がらない

※これは、人間の場合「条件つきの愛」と言われるものかと思います。
「お母さんのいうことを聞いてくれるいい子だから、あなたを愛しています」
「学校で良い成績をとったから、あなたを愛しています」というものです。
人間の健やかな成長を妨げるものとして有名です。

「あなたがあなただから、愛しています」そのように愛された子は、
自己肯定感が高く、うまくいかないことがあったり、
逆境などネガティブストレスに強い人間になります。
動物にも同じことが起きることが、ネズミを笑わせる実験でわかってきています。

愛犬とのつきあい方 まとめ

『よりそイズム®』

  1. 社会、他人に迷惑が及ばない
  2. 飼い主、本犬に危険が及ばない

なら、できるだけ犬らしく生きさせてやる

  1. お互いハッピーならお願いしよう
    ※人間の都合だけを優先するお願いはNG

補足

犬とつきあうときに、基本的に「こうあるべき」はない、と私は考えています。
迷惑でない、危険でないなら、その家族のルールでいいと思います。
大型犬との暮らしと、小型犬との暮らしでは、ルールも異なってくるでしょう。
家族の気持ちによっても異なります。

例えば、犬をソファに乗せるか、乗せないか。
ソファの上にいることが好きな犬は多いです。
飼い主さんもリラックスする場所なので、優しい波動が出るでしょう。
そんな飼い主さんに寄り添いたいと思うのは自然なことだし、
嬉しいことではないでしょうか。

なのに、私がドッグトレーナーになるための勉強を始めたころは、
犬をソファに乗せるのはNG事項でした。
最初は、そういうものか!と思って下ろしていましたが、
なんとももったいないことをしたと悔やみます。

幸い、わりとすぐに解禁にしましたが、大切な子犬の時期、
そのダメージは小さくないと思っています。
子犬の頃からソファをシェアして、快い周波数でよりそうことをしていたら、
彼らをもっともっと短に感じることができたと思うのです。

犬の習性を理解して、できるだけ犬がしたいことをできるようにしてやる、
させてやることは、犬たちの遺伝子をスイッチオンします。
犬たちによって快感であることは良い遺伝子をスイッチオンするのです。
そうすると、彼らの体のコンディションは良くなるわけで、
寿命も伸びると考えることもできなくはないと思います。

巷には「犬のしつけとはこうあるべき」があふれていて、
その多くは犬に窮屈な生を強いるものだと感じています。
それでは犬たちの遺伝子はスイッチオフになってしまう。
あるいは、悪い遺伝子のスイッチオンしてしまう。
そんなことを望んでいる飼い主さんはいないと思います。

『よりそイズム®』で愛犬の遺伝子スイッチオン!で、
いつまでも元気で、一緒に幸せに暮らしましょう!

ABOUT ME
nakanishi
Doggy Labo 代表 ナカニシ