犬とのよりそイズム

愛犬を幸せにする 飼い主さんのマインドセット

「よりそイズム®」という”マインドセット”

いろんな飼い主さんにお会いする仕事をしているわけなのですが、2011年に最初の本「犬のモンダイ行動の処方箋」を出すまでは、本当にいろいろな飼い主さんにお会いしてきました。
犬を支配したい人、犬は飼い主の言うことを聞くべき、世間に恥ずかしくない犬であって欲しい、おりこうな犬を飼っている飼い主と思われたい、自己満足したい、愛犬によって自己実現したい、など。飼い主さんが意識している、かかわらず、そうした思い、思考様式を持った方が、たくさんいらっしゃったように思います。

しかし、「犬のモンダイ行動の処方箋」を出版してから、本を読んでレッスンを申し込んでくださる方が増えて、特に2017年に「犬とのよりそイズム」が出てからは、愛犬によりそう、という私の考えに共感してくださる飼い主さんからのレッスンお申し込みがほとんどとなり、先に書いたような方には、ずいぶんとお会いすることがなくなったように思います。

愛犬によりそえるマインドセットができている飼い主さんと、レッスンを通してお会いできるようになった、ということと理解しています。

マインドセットとは?

マインドセットとは、個々の思考様式、と説明されています。それは、経験、教育、先入観などから形成され、その人の暗黙の了解、思い込み、価値観、個人としての信念も含まれています。

どんな親に育てられたのか、どんな兄弟がいたのか、どんな親戚に囲まれていたのか、幼稚園でどんな経験をしたのか、どういう校風を持つ学校で学んできたのか、どんな先生に出会ったのか、どんな友だちとつきあってきたのか、どんな社風を持つ会社に入ったのか、どんな上司や部下に囲まれていたのか、社会に出てどんな経験をしてきたのか、そうした全ての経験から、できあがっています。

ライフスタイル

私は、最近アドラー心理学に触れる機会があり、自分で開催している犬に関するセミナーにも、取り入れているのですが、マインドセットは、アドラー心理学の「ライフスタイル」に通ずるところがあるように思います。論理療法のABC理論も、飼い主と愛犬の関係において応用しているのですが、その中のBelief(受け取り方)にも通ずるところがあるかと思います。

マインドセットは意識の領域に存在するものだけでなく、あるいはそれ以上に無意識に存在するものが、その人の人生に大きな影響を及ぼすと言われています。なので、ビジネスにおいて「成功したい!」という思いを実現したい場合、人生においては「幸せになりたい!!」という思いを実現したい場合、マインドセットがとても重要になります。そして、犬にとっても、飼い主のマインドセットがどんなものかによって、その幸せは大きく変わってしまうのだと、強く感じました。

マインドセットの違い

まず、愛犬を幸せにする飼い主さんと、そうでない飼い主さんのマインドセットの違いを考えてみました。

・よりそいマインドセット

犬が犬として、できるだけやりたいことをやらせてやる、やりたくないことはやらせない、という、相手を受け入れることで信頼を得ることができるマインドセットです。相手にとって何が一番心地よいのかを考えられるもので、利他の精神から成り立っています。

・一体感マインドセット

犬は飼い主に服従するべき、自分の都合が良い行動をして欲しい、(自分のために)世間に恥ずかしくない存在であって欲しい、そのためには、したい行動を変えて欲しい、という、相手に自分の思い通りであって欲しいという気持ちを押しつける、一体感マインドセットです。利己の精神から成り立っています。

どちらが愛犬を幸せにできるかは、言うまでもありません。

どうすれば、よりそいマインドセットを持つことができるようになるか、まず大切なのは自己肯定感。

自己肯定感

自己肯定感は、自尊心と考えるとわかりやすいかと思います。私のセミナーで※「幸せのシャンパンタワーの法則」についてお話をしているのですが、毎回必ず受講生の皆さんに聞いていることがあります。その質問は

「愛犬を幸せにしたいと思っている人は手をあげてください」

というものです。
もちろん、全ての受講生のみなさんが手を上げてくれます。そして次の質問は

「今、自分は幸せです、という方は手をあげてください」

というものです。そうなると、多いときは半分くらいの方が手をあげないか、あげずらそうにします。
自己肯定感を高めるためには、まず自分が幸せになることが必要です。それをシャンパンタワーに例えてお話ししています。自分のグラスを幸せで満たせば、自然にその幸せは周りにあふれ出ていきますよ、という話です。

もし自分のグラスが空だったとすると、「こんなにしてあげているのに!」「なんでわかってくれないの」「どうして思い通りにしてくれないの!」となってしまうのです。自分が幸せであることが、愛犬を幸せにする大切な条件なのです。

私が開催している、飼い主さん向け「犬のことだと思ったら、自分がハッピーになって、愛犬ともっと幸せによりそえるセミナー」では、そうした理由から、自己肯定感を上げるワークをいくつか取りれています。

タイトル通り、受講して、まさに自分が幸せになって、家に帰ったらいつもより愛犬が愛おしく思えた!という、犬は全く変わっていないのに、不思議な現象が起きています(笑)自分を愛する力が、愛犬への愛のパワーをアップすると、私は信じています。

マインドセットの違い

マインドセットの違いを説明するのに、有名な「靴を販売する営業マンの話」があります。2人の営業マンが、アフリカで靴の市場調査をしてくるよう指示されます。その頃のアフリカでは、まだ靴を履く生活習慣がなく、ほとんどの人が裸足で生活をしていました。2人の営業マンは同じように驚き、それぞれ報告書を作成しました。
一人の営業マンは

「靴を履いている人はほとんどいないため、靴の需要はなく販売は困難」
と書きました。もう一人は

「靴を履いている人はほとんどいないため、今なら市場を独占できます!」

と書きました。

「人々は靴を履いていない」という事実は、(ABC理論でいうところの、A(Affair/出来事)で、「販売は困難」「市場を独占!」は、C(Consequence/結果、感情)で、それぞれB(Belief/受け取り方)が、真逆だったということです。

私たちは無意識のうちにマインドセットの影響を受けて、自分の人生を決めています。「幸せ」というC、結果を得るためには、幸せになれるマインドセットが必要になります。

心理学者、脳科学者も実証

マインドセットに関しては、心理学者や脳科学者も、人に与える影響の大きさについて実証しています。

エレーヌ・フォックス教授・脳科学者(オックスフォード大学感情神経科学センター)は、感情に影響し、前向きになる物質であるセロトニンを脳内で生み出す特定の遺伝子を発見し、その遺伝子は生まれ持った遺伝的な性質だけでなく、環境によって変わってくるという結果が得られました。

これは村上和雄博士が研究されている「心と遺伝子の関係」にも通ずるものがあると思います。セロトニンを生み出す遺伝子のスイッチオンできれば、人は前向き、ハッピーになれます。それは犬にも同じことが言えるだろうと私は確信に近く思っています。

「よりそいマインドセット」するには

マインドセットは個人の意識で変えることができます。アドラーも、人は「3日で変われる」と言っています。変われないのは、変わりたくない、変わらない、という選択を無意識の領域で自分でしている、ということです。マインドセットを変えるには、

1. 日々気づき
2. 変えようと努力すること

この二つがキーになるかと思います。
以下に、心がけると良いと思うことを上げておきます。

・愛犬が喜ぶと思うことをやるようにする
・愛犬が嫌なことがやらせないようにする
・愛犬にしてほしい行動は、どうしたらやってくれるかを考えるようにする
・愛犬がしてほしい行動をしなかったら、自分の伝えかた、教えかたを見直す
・頭で考えるだけでなく、愛犬に向き合い実際に行動する
・犬から、その無垢な生き方を学ぶ姿勢を心がける
・接しかたを変えたら一貫性を保つ
・愛犬の行動すべてに責任を持つ覚悟を固める

上記の心がけを実行しやすくするための5ステップをご紹介します。愛犬に対してかけた言葉を紙に書いてみる愛犬日記をつける接しかた変えると決めたことはすぐに実行にうつす家族にフィードバックをしてもらう反省点は書き出してすぐに改善する

さらに、マインドセットを定着させるために重要なこと7つの心がけは以下です

1. 愛犬に対する感情を大切に感じる
2. お別れのときまでに後悔しないようつきあうことをミッションとする
3. 愛犬と一緒にいて感じる小さな幸せをたくさん集める
4. 理想のつきあいかたをしている仲間とだけ一緒にいるようにする
5. 愛犬への言葉がけを意識する(「言霊」の存在を意識に入れておく)
6. 間違っていた「あたりまえ」と思っていたことを変える
7. つね日ごろから感謝の気持ちを忘れない(お別れの時だけではダメ!)

犬のしつけ、なにかおかしい!?

何度も書いていることですが、「犬のしつけ」に関しての常識は、おかしなものが多すぎます。感性で、心で、感じる「なんかおかしくない?」という違和感、不快感を信じることができるパワーを持ってほしいと、飼い主さんには願ってやみません。

“プロ”が言っていたから、とか、雑誌に書いてあったから、とか、ネットの情報にあったから、と、間違った情報に騙されてしまって泣いている、怒っている飼い主さんは、少なくないのです。これは、16年間、実際にお宅へ伺い、向き合ってきた飼い主さん、ご愛犬たちが教えてくれた、現場の叫びです。

最近は、ドッグトレーニングを学ぶ学校に通っている、卒業して先輩の店でアルバイトをしている、あるいは勤務している人たちにも、似たような種類の被害があることを知りました。ノイローゼになってしまって仕事をやめた人、やめようと思っている人、間違いに気づき始め、務めるのが苦痛になってしまった人。犬たちと向き合う仕事は、もっと幸せなはずです。

「よりそイズム」の使命が、さらにどんどん見えてきます。
まだまだ先へ進む必要がありそうです。

Trick or Treat!!!

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nakanishi
Doggy Labo 代表 ナカニシ