犬とのよりそイズム

かまってオシッコ!?〜ABC理論応用編〜

何回もおしっこをするように!!

こんな相談がありました。

「おしっこがトイレシーツにできるようになったのはいいのですが、こちらをみながら日に何回もするようになってしまいました!」

というものです。飼い主さん曰く、何度もシートを替えなければならないし、最初は可愛いと思っていたけれど、だんだん面倒になってきました、と言って相談されました。

これと似ている?もので、「うちの犬は、ずっと私を見ているので疲れます」という方がいらっしゃいます。この二つは、似たような問題です。勘の良い方はお気づきかと思いますが、ある「飼い主さんの行動」が、犬たちの行動に影響して、引き出しているのです。それは何か。

「飼い主さんが彼らを見ている」

それは・・・

「飼い主さんが彼らを見ている」

ということです。彼らは飼い主さんが見てくれていることをわかっています。だから、その行動を見てくれることに対して得られる報酬(犬にとって嬉しいこと)を手に入れているだけなのです。

「見つからないように盗み見しているんですが!」
という方もいらっしゃいますが、ぜんぜんバレてます(笑)動物たちの敏感さには、残念ながら人間はかないません。

飼い主さんが見ているから、おしっこをする。トイレを覚えてもらうために、おやつを必ずあげてください、とお願いをするようになってから定番で起きる「モンダイ」です。

犬はおやつ欲しさに、飼い主が見ていることを確認し、おしっこをしに行きます。トイレを失敗しないか心配な飼い主さんほど、犬の動きに敏感で、しっかりと見ていますので、犬も自信を持ってトイレに行って排泄をします。そしておやつをもらうのです。場合によっては、飼い主さんが常に見ていることを理解していて、何度もトイレに行くようになります。そのため、一回の排泄が少量になることもしばしば。

おやつをもらえるために、わざわざおしっこをする!と気づいた飼い主さんは、悔しがって(笑)何度もトイレに行くのをやめてほしい!と訴えるのですが、答えは簡単です。犬たちは、飼い主さんが「見ている」ことを確認してやっていますので、見ていなければいいのです。見てないフリではなく、見ないことです!でも、どーしても気になるので、目尻で追ってしまう、そんな飼い主さんは少なくありません。そういう飼い主さんに限って、トイレに行くのを見てくれなくなると、わざと変なところに排泄して

「あー!なんでそんなところに!!!」

と、言わされてしまうのです。犬たちが、人間をトレーニングすることに長けていることを認めざるを得ません。よく気がつく、面倒見の良い飼い主さんに起こりがちなケースかと思います。

「うちの子はずっと私を見ている」

「うちの子はずっと私を見ているので
可愛いんですけれど、ちょっと疲れます」

という悩み?に関しては、まず、ほかにそんなに見てくれる方はいますか?と聞いて見ることにしています(笑)すると

「そんな人、いませんよねー(笑)」

と照れ臭そうに笑う方が多いです。そもそも、あなたの愛犬があなたをずっと見ていることが、なぜわかるのですか?

そう、それは・・・

あなたが見ているからです!(*´艸`*)

「かまって欲しくてするおしっこ」

については、おやつをあげたり、シーツを変えたり、お尻を拭いてやったりするのが面倒臭いので困る、という飼い主さんもいらっしゃいます。これについて、私が犬たちとのつきあい方に応用している、論理療法のABC理論を使って、考えてみたいと思います。

ABC理論

ABC理論とは、アルバート・エリスが創始した論理療法におけるカウンセリング理論です。

人間の感情=C(consequence)、嫌だ、困る(など)というものは、出来事=Affair、Action(例:かまってっておしっこをされる)によって直接生じるものではなく、その人独特の受け取り方=B(Belief)によって生じる、と考えるものです。

A:Action(行動)

B:Belief(受け取り方)

C:Consequence(結果・感情)

わかりやすく人間の例であげてみると、例えば上司に怒られた人がいます。ある人は

A:Action(行動)上司に怒られた

B:Belief(受け取り方)自分はダメなやつだ、嫌われているのかも

C:Consequence(結果・感情)落ち込む

となります。しかし、ある人は、

A:Action(行動)上司に怒られた

B:Belief(受け取り方)自分は見込みがあるからだ、次はがんばろう!

C:Consequence(結果・感情)やる気がでる

となります。「上司に怒られた」という出来事は変わらないのに、結果・感情はまったく違うものになります。

これを応用して、先ほどのかまっておしっこをされて「困る」というケースを仮にGさんという人のお悩みと考えて、ABC理論でみてみると以下のようになります。

A:Action(行動)かまってオシッコをされる

B:Belief(受け取り方)めんどくさい

C:Consequence(結果・感情)困る

しかし、Nさんの場合、以下のように受け取ったとします。

A:Action(行動)かまってオシッコをされる

B:Belief(受け取り方)かまってほしいなんて、なんて可愛い!

C:Consequence(結果・感情)嬉しい

「かまってオシッコをされる」という行動は変わらないのに、それをされた結果、感情は全く違ったものになるのです。この二つのケースの場合、どちらが幸せな雰囲気があるかというと、言うまでもなくNさんのケースでしょう。これが、犬たちの同じ行動に対して、飼い主さんの気持ちに起きていること、その結果、悩んだり悩まなかったり、そうした違いが出てしまっているという事実なのです。

つまり、受け取り方を変えると、犬の行動がかわらなくても、ハッピーになれたり、そう出なくなったりする、ということなのです。そして、この考え方が、「よりそイズム」の基本です。犬の行動を犬だけのせいにして気分を悪くしていたことがあったら、受け取り方を変えるだけで、気分が変わってしまう。飼い主さんの気分が変わると、愛犬の様子、行動を変わる。家庭の雰囲気も変わることになる。これは、実際に、セミナーを受講してくださり、「よりそイズム」、ABC理論を生活に取り入れて、応用してくださった受講生の方に起きていることです

もともと心理学が好きで勉強していて、このABC理論を学んだ時、これは愛犬との関係に応用できる!とワクワクしたのがきっかけで、私のセミナーの軸、「犬たちの本当の幸せのために、人の考え方を変える」が生まれたのです。

Gさんの受け取り方、「めんどくさい」とNさんの「可愛い!」という受け取り方の違いは、いろいろな要素によって出てきます。親からの影響、育った環境、どんな人たちに囲まれて影響を受けてきたか、広くは日本という国の文化の影響も受けています。

結果、感情を比べると、「困る」に対し「嬉しい」とありますので、当然、嬉しい、という結果の方が幸せそうです。ならば、Gさんの受け取り方を「嬉しい」に変えるために、どう考えたら、どう働きかけたらいいのか。それが、ABC理論のD=Disputing(反論)になります。わかりやすく言うと?自分で自分にツッコミを入れてみましょう、ということになるかと思います。

「犬は、かまって欲しくてオシッコをしているのに、めんどうくさい、って本当に?」

「かまって欲しくてやる、ということは、かまってくれる、という学習があるはず。その学習をさせたのは、誰ですか?」

など、B、受け取り方に関してツッコミを入れていくのです。そして自分の中で、
「そうか、そんな風にかまって欲しいなんて、そんなに自分を求めてくれる人は他にいない!」
とか、

「シートを替えるために、やっていることをやめてそばに来てくれたり、おやつがもらえたりしたら嬉しいはずだから、それを学習させたのは自分だ!自分が変わればいい問題だ!」

と思えたら、めんどくさい、という気持ちにはならないと思います。

この考え方は、アドラー心理学(個人心理学)の言うところの「意味付け」に近いと思います。犬の行動の意味、犬たちにはそれなりにあるはずなのですが、人間はそれを外から見て勝手に意味付けをします。それが都合が悪いことになったら、犬の行動を否定するのですが、果たしてそれは正しいことなのでしょうか?犬の行動には、犬たちなりに意味があるはずです。それを理解しようとしないで、こちらの都合だけに合わせるようにするのは、母なる大地の上に存在する動物同士において、正しいことなのでしょうか?

「やりたいことができない、やりたくないことをやらされることは地獄」

前旭山動物園園長、小菅正夫さんが、幼い頃連れて行かれたお寺の住職が教えてくれた言葉だそうです。人間が、やりたいことができない、やりたくないことをやらされると鬱になったりします。犬たちができるだけ犬らしい生を生きられるように、人間の受け取り方、意味付けを変える努力をすることは、彼らの生命が、私たちよりもずっと短くして終わることを考えると、できるだけよりそい、らしく生きられるようにしてやりたい、と願ってならないのです。

 

 

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nakanishi
Doggy Labo 代表 ナカニシ