犬とのよりそイズム

西洋支配思想

私が勤務していた訓練所の所長は、スイスで犬のトレーニングを教わった、
と言っていました。
犬のトレーニングのアイデアは、西洋から輸入されたものがベースになっていることが
多いように感じます。

訓練所の考え方は、犬は人間に絶対服従させるべき、
というものでした。
叩いたり蹴ったりして、それが正しいことだと洗脳され、
やってしまっていました。

後悔してもしきれませんが、後悔するだけではなにもならないので、
そうした考え方が違うと感じられる人を増やしていく、
それについて説明することに尽力することで、
償っていかれたらと思っています。

そのために、「よりそイズム」を広めていくことが、
私の一生をかけた使命になりました。

幸い、訓練所でやっている体罰が、どうやらおかしいこと、
まちがっていることであり、

「犬が嫌いな人が良い訓練士になる」

という、怖い顔をした先輩からの一言で目を覚ますことができ、
即、訓練所を辞めて、シドニーのドッグトレーニングアカデミーに
入学したのですが、

そこで教わったことは、体罰は一切使わず、ほめてしつけるものでしたが、
「Obedience、服従」という臭いが消えることはありませんでした。

ほめはするものの、その背景には「支配する」という考え方が根強く
ありました。

・飼い主はリーダーであるべき
・リーダーは先にごはんを食べるべき
・散歩で前を歩かせない(リーダーウォーク)
・テリトリーはリーダーが守る
・ソファーには乗せない(リーダーと同じ高さに居ることを許さない)

などのルールは、明らかに犬を下に見る、
犬たちにとって窮屈なものでした。

では、なぜそうした考え方が生まれたのでしょうか。
それは、気候に関係しているという説があります。

和辻哲郎氏の著書「風土」によると、世界の文化は大きく分けて3つ、

「モンスーン型」
「牧草型」
「砂漠型」


に分類されるそうです。日本はモンスーン型で、
夏の季節風が湿った空気を運んできて雨を降らせ、
植物や動物がすくすくと生い茂り、その恵みを受けることができます。

そのため、受け入れるという態度が生まれるのだそうですが、
反面、自然災害も多く、それを耐える態度も生まれます。

日本の文化は、そうした「受け入れて、耐える」という風土に
影響を受けているそうです。

それに対し、西洋は牧場型で、夏の季節風が大雨を降らせることはなく、
そういう環境では草木が生い茂ることもなく、
土壌を切り開けばいつでも牧場を作ることができる。

自然は人間に対して従順であるために、自然や動物はコントロールできるもの、
と考える支配的態度が生まれたのだそうです。

日本では、人間と動物の間には上下はなく、神様でさえも鳥や動物に変身します。
動物が人間と結婚する話も少なくありません。

それは西洋ではほとんどありません。美女と野獣が結ばれるのは、
野獣が王子に戻ってからですし、カエルの王子様も同じです。

旧約聖書の「創世記」には、

「海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物すべてを支配せよ」とあります。

※英語だと let them have dominion over
翻訳ソフトで訳すと「彼らに支配権を与える」となります

God said, “Let us make man in our image, after our likeness:
and let them have dominion over the fish of the sea,
and over the birds of the sky, and over the livestock, and over all the earth,
and over every creeping thing that creeps on the earth.”
ギリシャの哲学者、アリストテレスは「自然は動物を人間のために創った」
と言っています。
そうした考え方がベースにあり、今でもどこか、犬たちを家族としてよりは、
支配する対象に見る傾向が根強く残っているように思えてしまいます。
イギリスでは今でも階級制度が存在しているそうです。


18世紀末にはジェレミー・ベンサムが、

「人間が正しくあるためには、動物が痛みや苦しみを受けないように
すべきである。肌の色が違うとか、足の数や毛深さ、尾があるかないか、
ということで感覚がある生き物を苦しめてはならない」

と唱えました。
これはまさに、アメリカンインディアンの教えに通じます。

しかし、まだまだ、犬のしつけ、トレーニングの考え方には、
支配思想が影響しているように思えてなりません。

中村禎里氏の「日本人の動物感ー変身譚の歴史」には

「もともと日本人の心の伝統においては、
人と動物との一体感が強かった、としばしば指摘されてきた。
これに対しヨーロッパ人の思想においては、
人と動物との断絶感がいちじるしい、といわれている」

とあります。西洋支配思想の影響を大きく受けていると、
家族である愛犬も、支配しなければならない、となってしまうのでしょうか。

日本人であるならば、感性で、家族とはどうつきあうのが幸せか、
足を4本持つパートナーたちと、どう暮らすのがお互いハッピーなのか、
わかると信じたい気持ちでいっぱいです。

わかる気持ちをサポートできる、
「よりそイズム」を学んで広めてくださる方を
育成していくことの重要性を、
あらためて実感させられました。

がんばるぞ!( • ̀ω•́ )O

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nakanishi
Doggy Labo 代表 ナカニシ