犬とのよりそイズム

散歩

飼い主さんのお悩みで多い「散歩」

お散歩の本来の目的はなんでしょう? 一緒に楽しく歩きたい、のではないでしょうか?人も、犬も? 研修先のシドニーで聞いた話なのですが、日本人が「犬を散歩に連れていく」と言ったら、「私たちは(オーストラリア人)私の散歩に犬がついてくる、と考える」と言われました。飼い主は「α(リーダー)」になるべし!と、ドッグトレーニングアカデミーで教わっていた当時は、なるほど!と思ってしまったのですが、今考えると、「犬を散歩に連れていく」でもないし「私の散歩について来い」でもない。「一緒に行こう!」じゃないかな、って思うんですね。

散歩の目的は「気分転換」と、私はレッスンで飼い主さんに伝えています。違う景色、違う匂い、違う音、違う温度、五感を使って刺激を楽しむ時間、少なくとも犬にとってはそういう時間にしてやりたいものです。五感から得た情報により、脳が活性化することは、健康にも、アンチエイジングとして有効なはずです。

そんな散歩ですが、お悩みが多いのも事実。多くは「引っ張る」「他の人、犬に吠える」「拾い食い」という問題。私が開催しているセミナーでは「犬はなぜ引っ張る?」という質問をしたりしていますが、答えは「ヒモをつけるから」(笑)これに対して受講生さんは笑うのですが、ちょっと待って!案外、ほんとうにそうなのでは?と思うのです。犬たちは、ヒモを持っている私たちこそ、「引っ張る」と思っているのではないでしょうか?
視点を変えると、いろいろなことが見えてきます。

過去、日本ペットドッグトレーナーズ協会の事業企画委員を務めていたとき、年に一度のカンファレンスを開催していたのですが、そのときに講義をしてくださった、イギリスのトレーナー、サラ・ホワイトヘッド博士は、犬たちが散歩で引っ張り、前に出ようとするのはなぜか、という質問に対し、当時流行っていた?「ドミナンス(優位性)」ではなくて、「ただ前に行きたいからよ!」と発言して、驚いたと同時にとても新鮮に感じたことを覚えています。なるほど、たしかにそうです!前に行きたいのにヒモがついているから引っ張ることになる。でも犬たちは、それほど不快感を表すこともなく(慣れてからは)かえって、飼い主とつながっていることを感じているようにも思います。ある飼い主さんは、「さあ、手をつなごう!」と言ってヒモ(リード)を着けている、と言っていました。
とても素敵です。

愛犬が大好きなおやつを持って行く

散歩に行くときは、大好きなおやつを持っていきましょう。おいしいものをもらえることは、愛犬もハッピーですし、愛犬がハッピーな姿をみるのは飼い主もハッピーなはずです。おやつは、何種類か持って行くと良いです。そのとき、おやつの大好きランキングが大切です。愛犬の好みを知らない飼い主さんも、実は少なくありません。なんでも好きです、という方ほど、いざ何か刺激があるとき、食べてくれなかったりします。おやつ、と一絡げにしないで、好き、すごく好き、超好き!という具合に、愛犬の好みを把握しておきましょう。

愛犬の「苦手」なことに出会ったときの対処法 ここでおやつが活躍します!「苦手」たとえば、人、犬、自転車、バイク、車、スケートボード、台車、などがよくある「苦手」な対象です。それらに出会ったときに、怖くて吠えてしまうというお悩みの解決には、おやつで気を引いて対処する、という方法が、犬にとっても飼い主にとっても平和で、無駄なエネルギーをつかわなくて済みます。おやつを使うコツは、人や犬という「苦手」吠えてしまうきっかけになる刺激と出会うとき、刺激の強さがカギになります。

愛犬がその対象に気づいた瞬間、どうしたらいいかのお願いをする言葉をかけることが重要になります。気づく前だと、その対象とおやつを結びつけることができないので、気づいた瞬間を捉えます。これはかなり運動神経が必要になりますので、飼い主さんも努力が必要になります。このとき、その刺激との距離も重要です。近すぎると刺激が強すぎてしまうので、十分な距離を保たなければなりません。

そうなると、飼い主さんのマネジメント力も必要になってきます。おやつで気を引きながら、すばやく歩く、走るなどして、上手にかわします。このとき、悲壮感をただよわせないこと!楽しく、気分を盛り上げてかわします。刺激から、落ち着けるくらいの距離離れたら、座らせて、よくほめて、楽しい雰囲気を保ちながらおやつをあげます。

道を変える、UターンをするのもOK

上手にかわせる場合には、かわしますが、刺激に対する不快や恐怖が大きいときは、避けるのがよいです。避けられない場合には素直にUターンしましょう。こうアドバイスすると、「負けた気がして」という飼い主さんがいらっしゃいますが、何に負けるのでしょう?(笑)相手はなんとも思っていないと思いますし、それはあまりにも相手を卑下しすぎているのでは?と、私は思うのです。相手も犬を飼っている犬が好きな方なら、Uターンしている姿を見て、あなたの犬は人や犬が苦手なんだな、という優しい気持ちをもたれるのではないでしょうか?

それを、自分が勝った!と思う人だと判断するのはエゴイスティックだと、私は思います。もしかしたら、ご自身が無意識のうちに「勝った」と思うタイプの方なのかもしれません?もしそうなら、改めた方が人生楽になります!

相手が気を悪くする、という心配も同じことです。相手を尊重するなら、きっと温かい心で理解してくださる方が、と信じるようにしてみましょう。気になるなら、軽く会釈をするのでも、相手に十分通じると思いますし、通じない場合には、こちらの問題ではなく、お相手の問題かと、私は思います。「すみません」と言うのもよいでしょう。「ありがとう」でも。

愛犬が安心して歩けるコースを選ぶ

安心、安全な散歩をマネジメントするのは、飼い主さんの大切な役割でもあります。ヒモをつけて歩いている以上、愛犬の自由は飼い主さんに委ねられています。つまり、一緒に歩いているけれども、舵をとるのは飼い主さん、キャプテンは飼い主さんなのです。

私が犬だったら、苦手なものがある場合には、それを避けてくれる船に乗って、優雅にすごしたいと思います。苦手なものがあるけれど、一回も怖い思いをさせないで、吠えさせることなく、お互いずっと笑顔で楽しく散歩に行って帰って来ることができたら、それはとてもよい時間を愛犬とすごしたことになるのではないでしょうか。
大切なのは、「一緒に楽しむ」こと。笑顔を忘れずにいきましょう!

※拾い食いに関しては別途書きたいと思います。

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Doggy Labo 代表 ナカニシ